公共工事の契約不適合責任とは?

公共工事における契約不適合責任(契約不適合特約)の概要を解説する動画サムネイル。特約、2年間保証、履行保証、履行ボンドなど、民法改正後の重要キーワードと解説テーマを提示している図。
目次

はじめに

公共工事で契約保証を求められる際、請負契約書や入札公告の中に
「契約不適合特約を付すること」といった記載がなされる場合があります。

特に自衛隊が発注する工事では、
この特約が条件として付されているケースが多く見られます。
一見すると、契約条件の一つに過ぎないように思えますが、
与信枠の観点から見ると、今後の落札状況に大きく影響する重要な特約です。

本記事では契約不適合特約について解説をします

はじめに

公共工事で契約保証を求められる際、請負契約書や入札公告の中に「契約不適合特約を付すること」といった記載がなされる場合があります。

特に自衛隊が発注する工事では、この特約が条件として付されているケースが多く見られます。
一見すると、契約条件の一つに過ぎないように思えますが、与信枠の観点から見ると、今後の落札状況に大きく影響する重要な特約です。

本記事では契約不適合特約について解説をします。

契約不適合責任とは

契約不適合責任は履行保証ではなく、
公共工事履行保証証券(以下、履行ボンド)の特約でつけることができます。
履行ボンドは、「工事を最後までやり切れなかったときのための保証」がメインです。
倒産や重大な契約違反などで工事が中断し、発注者が別の業者に依頼して工事を完成させなければならないような場面を想定した仕組みです。

これに対して、契約不適合特約は、工事がいったん完成したあとに発覚する「契約どおりになっていない状態」に関する責任を対象とするものです。たとえば、設計図書や仕様書どおりに施工されていなかったり、完成後に不具合が見つかって補修や、やり直しが必要になった場合、発注者は受注者に対して履行の追完(やり直し・補修)を請求することができます。
公共工事の場合、このような契約不適合に関する責任期間は、完工後2年間と定められているケースが多く見られます。

契約後の影響は?

ここで押さえておきたいのが、
「契約不適合特約を付けた履行ボンドは、契約が終わったあとも与信枠を圧迫し続ける
という点です。

履行ボンドは、民間の損害保険会社でしか取り扱いができません。
そして、損害保険会社が設定する与信枠は、
建設中小企業の場合だと一般的に500~1000万円程度にとどまります。

請負金額3000万円の公共工事における保証枠(1000万円)への契約不適合責任特約(2年間)の影響を示す棒グラフ。保証割合が10%の場合と30%の場合で、使用不可となる保証枠(300万円または900万円)の違いを比較した図。

例えば、与信枠1,000万円を確保している会社が、
「請負金額3,000万円・契約不適合特約2年付き」という契約保証を締結したとします。
この場合、その契約のために一定額の与信が2年間拘束されることになり、
仮に10%保証の300万円分を使っているとすると、
残りの与信枠は700万円しか使えない計算になります。

30%保証も珍しくありません

このような契約が重なってくると、
新たに落札した工事に対して履行ボンドを付けようとしても、制約されてしまいます。
会社の実績的には請負金額1億円規模まで十分に対応できる会社であっても、
契約不適合特約付きの保証が積み重なることで、
与信枠の面から受注可能な工事規模がどんどん削られてしまう、というイメージです。

対策

契約不適合特約が付いたからといって、
「もう与信枠はどうにもならない」というわけではありません。
与信枠を増額できる体制づくりと、損害保険会社との交渉がカギとなります。
中小建設企業が一般的に加入している、賠償保険や労災上乗せ保険などの内容で、十分交渉の材料になります。具体的には、加入している保険契約をむやみに複数社・複数商品に分散させるのではなく、どの契約をどの保険会社に集約するか、逆にリスク分散の観点からどこまで別会社を使うか、といった「集約と分散のバランス」を設計していくことが重要です。同時に決算書の内容を少しずつでも改善していくことで、与信枠の増額交渉もしやすくなります。

契約不適合責任特約により900万円が2年間使用不可となった保証枠に対し、建設業専門のキャラクターがハンマーで「増額」を打ち付けることで、保証枠を拡大できる様子を示すイラスト。保証枠の増額対策を表現。

当社は、このあたりの整理と交渉をセットでサポートしており、最初の申請で与信枠が500万円までしか通らなかった企業様を現在は3,000万円まで増額した実績もあります。
契約不適合特約付きの工事が増えてきて、「そろそろ枠が苦しくなりそうだな」と感じているようでしたら是非一度ご相談ください。

契約不適合責任とは

契約不適合責任は履行保証ではなく、
公共工事履行保証証券(以下、履行ボンド)の特約でつけることができます。
履行ボンドは、「工事を最後までやり切れなかったときのための保証」がメインです。
倒産や重大な契約違反などで工事が中断し、発注者が別の業者に依頼して工事を完成させなければならないような場面を想定した仕組みです。

これに対して、契約不適合特約は、工事がいったん完成したあとに発覚する「契約どおりになっていない状態」に関する責任を対象とするものです。たとえば、設計図書や仕様書どおりに施工されていなかったり、完成後に不具合が見つかって補修や、やり直しが必要になった場合、発注者は受注者に対して履行の追完(やり直し・補修)を請求することができます。
公共工事の場合、このような契約不適合に関する責任期間は、完工後2年間と定められているケースが多く見られます。

契約後の影響は?

ここで押さえておきたいのが、
「契約不適合特約を付けた履行ボンドは、契約が終わったあとも与信枠を圧迫し続ける
という点です。

履行ボンドは、民間の損害保険会社でしか取り扱いができません。
そして、損害保険会社が設定する与信枠は、
建設中小企業の場合だと一般的に500~1000万円程度にとどまります。

請負金額3000万円の公共工事における保証枠(1000万円)への契約不適合責任特約(2年間)の影響を示す棒グラフ。保証割合が10%の場合と30%の場合で、使用不可となる保証枠(300万円または900万円)の違いを比較した図。

例えば、与信枠1,000万円を確保している会社が、「請負金額3,000万円・契約不適合特約2年付き」という契約保証を締結したとします。
この場合、その契約のために一定額の与信が2年間拘束されることになり、仮に10%保証の300万円分を使っているとすると、残りの与信枠は700万円しか使えない計算になります。

30%保証も珍しくありません

このような契約が重なってくると、新たに落札した工事に対して履行ボンドを付けようとしても、制約されてしまいます。会社の実績的には請負金額1億円規模まで十分に対応できる会社であっても、契約不適合特約付きの保証が積み重なることで、与信枠の面から受注可能な工事規模がどんどん削られてしまう、というイメージです。

対策

契約不適合特約が付いたからといって、
「もう与信枠はどうにもならない」というわけではありません。
与信枠を増額できる体制づくりと、損害保険会社との交渉がカギとなります。
中小建設企業が一般的に加入している、賠償保険や労災上乗せ保険などの内容で、十分交渉の材料になります。具体的には、加入している保険契約をむやみに複数社・複数商品に分散させるのではなく、どの契約をどの保険会社に集約するか、逆にリスク分散の観点からどこまで別会社を使うか、といった「集約と分散のバランス」を設計していくことが重要です。同時に決算書の内容を少しずつでも改善していくことで、与信枠の増額交渉もしやすくなります。

契約不適合責任特約により900万円が2年間使用不可となった保証枠に対し、建設業専門のキャラクターがハンマーで「増額」を打ち付けることで、保証枠を拡大できる様子を示すイラスト。保証枠の増額対策を表現。

当社は、このあたりの整理と交渉をセットでサポートしており、最初の申請で与信枠が500万円までしか通らなかった企業様を現在は3,000万円まで増額した実績もあります。
契約不適合特約付きの工事が増えてきて、「そろそろ枠が苦しくなりそうだな」と感じているようでしたら是非一度ご相談ください。

公共工事の保険代理店「東京損害補償センター」の企業ロゴ。ヘルメットを被った狼のキャラクターが、スーツ姿で立っている。
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